第7章 引越し蕎麦※よく見ると三人前
「琥牙様の体が熱いでしょう?」
「はい。 だからこうやって暖めないと」
泊斗さんが私を不審なものを見る様な目付きをして見てから琥牙からべり、と布団を剥がしにかかる。
そして性懲りもなくまたがぷ、と彼の腿の辺りを咥えようとする。
「待って、今度はどこ連れてくの!?」
「体を冷やさないと。 風呂桶に水を溜めましたから小一時間程ですね」
今度はちゃんとした言葉だがやっぱり何を言ってるのか分かんない。
「毎日そうやって熱を冷まして、滋養のある食物を与えるのです。 里の時は血の滴る小動物のレバーなどを」
こちらではそのようなものを購入出来ますか? そんな事を訊いてくる泊斗さんから守る様に琥牙の体に縋り付いてそれを阻止する。
「止めて下さい……あの、泊斗さん? それってどこ情報?」
「はい?」
「そんな事したら下手したら肺炎になるから。 誰がそんな事しろって言ったんです?」
「……琥牙様の母上ですが。 私たちには人間の体の事は分かりませんので」
……虐待なの?
琥牙ってばお母さんに虐待されてたの?
「私が琥牙を看ます。 泊斗さんは何もしないで!」
「………………」
目に涙を溜めて訴える私に泊斗さんはたじろいだ様子だった。
「琥牙は私に任せていただけませんか? どうか」
「……真弥どのがそう仰るのなら。 ですが、様子を見に来るのは許していただけますか?」
いいですけど、彼には絶対触らないで、指一本触れないで。 そう言う私に気圧されてでは今晩の所はお暇します、と泊斗さんが引き下がった。
「雪牙様と違い琥牙様は昔からこうなのです。 ですから私たちの間では琥牙様は人の血で弱くなってしまったと言われているのですよ。 実際に姉上様はじめ混血の女性は皆短命なわけですし」
「……………」