第7章 引越し蕎麦※よく見ると三人前
伯斗さんが出て行ったあとに救急箱やタオルなどを出して看病の体制を作る。
服は迷ったが、目が覚めた時に着替えてもらう事にした。 冬場ではないから大丈夫だろう。
お昼に出したフルーツの余りがあったので、水と少しの塩を混ぜて吸収の良い飲み物を枕元に置いておいた。
「琥牙……起きれる? 水分取って」
「……………ん」
朦朧とした様子の琥牙が少しそれを口にしてまた体を横たえる。
ぺたりと冷えピタを貼ってそんな彼を見詰め、やがて琥牙が薄っすらと目を開いた。
「寝てて……いいの?」
「むしろ寝てなきゃ。 熱が38度超えてるよ。 39度超えたら病院いこ」
「向こうではそういう時こそ鍛えなきゃって水ごりとかさせられてたんだけど……」
「しないで。 お願いだから」
「ごめんね。 最近平気だったから大丈夫かと思ってたんだけど。 真弥…… 何でそんなに悲しそうなの?」
「心配だからに決まってるでしょう」
「弱い者は淘汰されていなくなる。 普通の事だよ」
それならなんで私の所に来たの?
里のために子供でも出来ればって、琥牙もそう思ってたの?
色んな言葉が出かけたけど、全部飲み込んで唇を噛み締める。
指先で彼の瞼に触れ、そっとその目を閉じさせた。
「休んで……ね?」
「…………うん」
エアコンは緩く除湿だけにして彼の体を薄目の上掛けで肩まで覆った。
いつもよりも早い呼吸。
けれどぶっちゃけていうとこれは多分ただの…………風邪だ。