第43章 オオカミ青年とおねえさん
「でも桜井はよくやってると思うよ……女とは思えないぐらい。 実質名ばかりの課長よかみんなから頼られてるし」
仕事帰りの居酒屋で、なにかを察してくれたのか。
ゴクゴクとビールを飲む私に同僚が労わってくれる。
幸運にも私は人に恵まれていると思う。
周りに悪い人なんていないし、彼らのために動くことは苦ではない。
それにしてもやって来れたのには他にも理由があったのだと思う。
琥牙義兄さんみたいに立派な旦那さんがいても、子供を持っても復職して頑張っているお姉ちゃんを尊敬している。
……それに、一人前になったら─────……
雪牙さんのことも考えて、けれど、頑張れば頑張るほど、彼は遠ざかっていっているような気がした。
毎日遅くまで残業して『女らしく』着飾ることも忘れて。
「マァマァ桜井……んな暗い顔しないで。あんないい彼氏もいるんだし。 おー、いい飲みっぷり」
「はあ? 彼氏なんて居ないわよ」
それからは休みの日に甥や姪と過ごすか、こうやってたまに飲んで発散するぐらいしか気持ちの行き場がない。