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オオカミ少年とおねえさん

第43章 オオカミ青年とおねえさん



[美緒]

****

私はてっきり莉緒が異性に慣れてないとばかり思っていた。
現に私には男性の友人も多い。

けれど大学を卒業したと同時に莉緒が結婚をして、一方、私には浮いた話のひとつも無い。


『そういう意味だろ』


二年前にそんな風に彼に言われ、ようやく私は自分の気持ちに気付いたぐらい。
そして本当の意味で異性に慣れてなかったのは、実は私の方だとも気付いた。

……たぶんだけど、莉緒のことが気になって、自分のことまで気が回らなかったんだろう。

それについてはいい。

いいのだけれど。


「雪牙さん! 供二くんと遊ぶのはいいけど、あんな高い木の上なんて、危ないでしょう!?」

「いいんだよオレらは。 逆にあんぐらいじゃなきゃ鈍るんだから。 いちいちうるせえなあ」

「それにまたこんなに散らかして……姉さんの仕事が今繁忙期なのは知ってるでしょ」

「あーもう、うるせー。 仕事仕事ってホント」

「……なに?」

「仕事してても真弥は女らしいのにな」


そう言ってから雪牙さんがはっとした顔をした。
私の顔をチラッと見てから、気まずそうにその場を離れる。
彼が姉のマンションを出て行った後で、部屋の片付けをしながら出るのはため息ばかりだ。

雪牙さんとは昔から折り合いが良くなかったけれど、祖父が去年他界した、最近は余計に酷くなった気がする。

そしてこうなると何日か彼と口をきくことはない。

相性が悪いんだろう。

雪牙さんがあの時口に出した言葉も、今は違うのだろう。




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