第43章 オオカミ青年とおねえさん
「……ん、れ? 雪牙さん」
「おーまーえーは。 毎度毎度……少し口喧嘩したら、すぐこうだ」
お店を出てすぐ、雪牙さんが出口を出たところでむっつりとした表情で立っていた。
「き、気持ち悪。 おんぶして雪牙さん」
「んじゃー俺はこれで。 お疲れ桜井、雪牙さん」
「お疲れ。 いつも悪いな。 ああ、この事は」
「ぷっ…分かってます。本人には黙っときますよ。 桜井のことだから気にし過ぎて面倒っぽいんで」
雪牙さんの背中は広い。
彼の白っぽい髪色は昔プラチナブロンドに近かったという。 今は茶色がかって目の色も薄い鳶色で、並ぶと琥牙義兄さんとよく似ている。
私が大学の時出会った頃の彼は高校生みたいで、それからあれよあれよと琥牙義兄さんと同じに見上げるぐらいの男性になった。
しかも私より歳上だとだいぶ後に聞いたのだから、私が彼についてどう思ってるかなんて、気付くのが遅れたのも仕方ない……のかもしれない。
だってオレは人じゃねえし、なんて去年ゴニョゴニョ言っていたっけ。
けれど私にとっては、いくらでも女性が寄ってきそうな彼に、昔からその影がちっとも無いことの方が不思議だ。
正しく言えば、死活問題。
雪牙さんはこんな時はとてもゆっくりと歩く。
ゆらゆら揺られながら彼につかまってると安心する。
照れ屋
気が利かない
正直過ぎ
けれど誠実で優しい、昔から雪牙さんはそんな人だ。