第43章 オオカミ青年とおねえさん
日が経って月が経って、オレは美緒の実家に行くことが多くなった。
彼女の爺さんは足を痛めてから二年ばかり寝たきりだという。
伯斗なんかもいつかこうなんのかなあ、などと思いながら風呂に入れたり縁側で一緒に飯を食ったり。
里の仕事の合間にオレはそんな風に過ごすようになった。
爺さん婆さんと話しながら過ごす家は里からも近く、そのせいか居心地がいい。
似たような空気。 風の匂いがする。
まるで化粧っけの無かった美緒が少し女らしくなった。
そういう余裕が出来たということか、とホッとした。
「雪牙さんってホント物好きよね。 誰か良い人でも居ないの? イトコとして時々心配になるんだけど」
呆れたように頬に手を当てながらオレに言う。
「……なあ、お前が仕事で一人前になんのっていつ頃なんだ?」
「………?」
最近綺麗になった美緒。
でもオレはあんまり心配はしてない。
「兄ちゃんと違ってオレはこういうのは苦手だから。でも三年ぐらいは待ってもいい」
いつからか、オレの傍にいる時の美緒はいつも女の匂いが強くなることには気付いていた。
「……ど、どういう意味だか分かんないわ」
「そういう意味だろ……察しろよ」
こんな時、兄ちゃんみたいにサラッとキスのひとつでも出来ればいいんだけどなあ。
図体ばっかりデカくなってもオレはちっとも変わりゃしない。
んで惚れたのが、こんな面倒臭そうな女ときた。
そっぽ向いている美緒から同じようにこっちも目を逸らした。
ただ美緒はなんとなく、本当のオレのことを知っても「ふうん?」てな顔をするんだろう。 そんな気がする。
……何年後かは分からない。
そのうちオレはこいつと一緒になりたいと思ってる。