第43章 オオカミ青年とおねえさん
「買い出しぐらいは付き合うぜ」
「雪牙さんがいたら周りにジロジロ見られるから嫌なんだけど……」
心から嫌そうな顔をして断りやがる。
美緒は仕事をしながら、昔から真弥の実家での殆どの家事。 それから今は祖父の介護なんかを一手にしていると聞いている。
そんな話を聞いたのも人づてにだ。
真弥にさえ、愚痴を言ってる姿を見たことがない。
他人の心配はする癖に。
オレも含めてテーブルにはいつも食う奴の好物が並ぶ。
……そういう所も真弥と似てる。
何となく手を出したくなるので、彼女といる時のオレは普段やらない家の事なんかを手伝うようになった。
「美緒。 お前誰か良い奴いねえのか? 一応はイトコとして心配してんだけど」
「そんな暇はないし……今どきそういう考えって古くない? まずは仕事で一人前にならないと。 ちょっとその服のたたみ方。 邪魔するんなら手伝わなくていいから」
「なんだよ。 少しズレてるぐらいいいだろ? お前はもう少し手抜けよ色々と」
……なんなら莉緒みたいに、分かりやすく楽んなればいいのに。
ああ、そういえば。
真弥も放っといたらこんな感じになってたんだろうか。
昔のオレは男女には明確な役割があると思っていた。
あまり拘らなくなったのはあの二人を見ていたせいだ。
気付けば兄ちゃんは真弥を助けていた。
そして真弥は兄ちゃんを助けていた。
今も、そして多分これからも。