第43章 オオカミ青年とおねえさん
[ 雪牙]
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「お姉ちゃん、本当におめでとう」
「莉緒もようやく落ち着いたんだね。 もうキョロキョロすんじゃないわよ」
そんな風に目に涙さえ溜めながら、彼女は心から嬉しそうな顔をして自分の姉妹の結婚を見送った。
どっか抜けた姉とだいぶ世話のかかる妹の間に挟まれた彼女は、自然にそうならざるを得なかったんだろう。
里ではまたポツポツと人狼の雌も生まれて育つようになった。
十何年後かは分からない。
自分もそのうちその中の誰かと一緒になるんだと思う。
「雪牙さん。 また来たの。 貴方が来ると一気に冷蔵庫が空になるから、少しは遠慮して欲しいものだけど」
「……別にお前に会いに来たワケじゃねえよ美緒」
「そう」
人狼と人とで結婚した兄ちゃんと真弥。
琥牙兄ちゃんの弟であるオレと、真弥の妹である美緒。
美緒は確か今年で24歳になる。
オレは兄ちゃんが結婚した歳を超えた。
やれ里の用事だわ兄ちゃんとこの子守りだわで、真弥の親族とも顔を合わせることが多くなった。
真弥の弟の浩二とは歳も近いし、こちらの事情も知っている。 今はなんならオレの一番の連れといっていい。
そんなかでいまいち折り合いが悪いのがこの女である。
やっぱり真弥と少し似てる。
長身でメシが美味く世話焼きな所。
ただ真弥はこんなに可愛げの無い女じゃない。
自分が恋愛感情みたいなものを初めて持ったとしたなら、今考えると真弥だったかもしれない。
あの兄ちゃんには死んでも言えないけど。