第42章 琥牙くん、上京
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警戒心が無い。
どちらかというと好意は伝わる。
とはいえ、こちらに発情してるわけでもない。
ファミリーレストランでご飯をご馳走になりながら、おれは相手を観察していた。
むしろ話し口調から、明らかに子供扱いされてるのが分かる。
単に子供が好きなのかな。
それならそういうことにしておこう、なぜだかそう思った。
「毎日大変だよね。 電車通学なんて。 危ないから気を付けるんだよ」
自分をはるか棚に上げて、そんなことを言う。
「ね、お酒飲んでいい?」
「うん?」
「ありがと。 私ばっかりごめんね。 仕事上がりのビールって、至福なんだよね!」
おれは子供設定じゃないのかな?
空腹に任せてがつがつ食べてるのをニコニコしながら、こちらを見ている。
それで、自分のお皿が気になるのかな。おれはそう思い当たった。
「ポテトフライ要る?」
「要らない、太るし!」
「?」
鈍いだけかと思うと、YesNoがハッキリしてる。
子供でも下に見ない。
それにしても。
綺麗な人だと思う。
周りの人間と較べても抜きん出てスタイルが良くて、まずそこに目がいくけど。
最初印象的に感じた目とか、細くて長い指とか小さな白い耳とか、一つ一つのパーツが。
大っきい目が笑うと無くなって、彼女は大体いつも楽しそうだ。
自分より背の高いこの人が、むしろかわいいと感じた。