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オオカミ少年とおねえさん

第7章 引越し蕎麦※よく見ると三人前



それからもちゃくちゃくと作業は進み、ひぐらしが鳴き始める夕方になりあとは細々とした片付けだけになった所で、本日の引っ越しはひと段落させる事にした。

帰ろうとする雪牙くんを琥牙と見送りに行く。


「お疲れ様。 今日はありがとうね」

「……力仕事は男のする事だし。 また何かあったら手伝ってやってもいい。 あと、よくよくみたら真弥って兄ちゃんの好みかも」

「そうなの?」


私が?
自らを指差すと雪牙くんが琥牙と似たような思惑の無さそうな表情でうん、と頷く。


「兄ちゃん胸のでかい女が好きだもんな!」

「はっ? ちょ、雪牙!!」


いきなりの不意打ちを食らった琥牙が雪牙くんに何か言いかけるも、狼に戻った雪牙くんが器用に木の枝に身を躍らせ闇の中へと消えていった。


「ま、また落ち着いたら遊びに来てね」


「……ハハッ」


琥牙が乳好きとは、それは初耳だ。
無言になった彼をちらりと見る。


「……好きなの? 胸」

「そういう訳じゃないよ。 見慣れなくて珍しいからつい目がいくだけで」


困ったみたいに頭を搔いた。

二足歩行動物は胸が目立つのかもね。
Dカップがキツめの私は確かに小さい方ではないし。


「触る?」

「なんか恥ずかしいからいいよ…… 汗かいたし。 でも今日は楽しかった」

「引越しが?」

「うん。 真弥と初めてする事は何でも楽しい」


乙女か。
だけどそういう事を嬉しそうに話してくる彼はとても微笑ましい。

そんな琥牙と向かい合わせになってこつんとおでこ同士をくっ付ける。


「そうだね。 引越しだけじゃなくって、色んな事。 二度目も三度目も楽しかったらいいね」


「うん。 真弥、冷たくって気持ちいい」

「そ? ていうか、琥牙が熱くない」


あれ、熱い。
ホントに熱い。 そしてよくよく見ると琥牙、顔も赤くない?


「……ちょっと琥牙、熱あるんじゃないの? 大丈夫?」


「大丈夫、いつもどお……」


それを言い終わらないうちにずる、とこちらに重みが乗ってきて支えきれず彼ごと崩れそうになる。


「っ? 嘘やだ、琥牙!!!」


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