第39章 デートでお給料二週間分
「……っ……もちろんだよ!!!」
勢いのまま飛び付いて、そんな私を彼が難なく受け止めた。
「わあ……真弥に抱きつかれたの、初めてだ」
私の腰と背中に手を回して抱きしめながら、この後に及んで嬉しそうにそんなことを言う。
『真弥と初めてすることはなんだって楽しい』
『ずっと楽しかったらいいね。 二度目も、三度目も』
おでこ同士をくっつけて、そんな会話をしたのが、随分前のことのように思えた────────困ったことに、あれからもちっとも、私の気持ちは変わってない。
きっとこれからも、私たちには色んな初めてが待ってる。
彼の首に腕を回し、誰よりも強くて弱い、この人を愛おしいと私は心から思う。
「ずっと一緒にいようね! 琥牙がお爺ちゃんになっても」
「真弥がお婆さんになってもね」
「愛してるよ。 大好き」
「ありがとう。 もちろんおれも、何よりも」
引越しをしたあの日と同じ表情で琥牙が応える。
ありがとう。
日々彼と交わしあったいくつもの感謝の言葉。
些細なことで、いつも彼はそれを口にする。
そしていつしか私もそうするようになった。
見付けてくれてありがとう。
選んでくれてありがとう。
ここに、そばにいてくれて。
愛してくれて。
悲しみよりもいつだって、喜びの方が大きくて。
そんな人生を気付かせてくれて、ありがとう。