第39章 デートでお給料二週間分
……どちらにしろ、気軽にプレゼントするようなものじゃない。 それ位は私にも分かる。
「いや、駄目とかじゃなくて嬉しいよ。 けど、高いよね? これものすごく」
「なんか二週間で正社員一年雇ったぐらい働いたからっていっぱいもらえたよ。 だから大丈夫」
琥牙がにこにこと笑う。
そうか。 卓さんてその辺りは気前が良かったんだ……って、そうでは無く。
これは一体、どう受け止めれば良いんだろう?
サイズとか分かんないけどピッタリだと思うよ。 そんなこと言って急かされても。
どの指に付ければいいの?
そんな風にウロウロしてたら、また業を煮やしたみたいに。
「もう、つけてみてよ。 ちゃんと真弥に一番似合いそうなの選んだんだから」
そう私の手を取って、躊躇なく左手の薬指にはめられたそれが私にぴたりと収まった。
「ええと……お返ししないと?」
もしもそういう意図なら腕時計だっけ……?
いやでもこれは人の場合であって。
グルグル考えてると、琥牙が手に持っていた包装紙からリボンの紐を引き抜き、リングが輝く左手の、手首に緩くそれを結ぶ。
「おれは真弥が一番大事だから離そうとしたんだよ。 でも、真弥は無理なんだよね」
「………そうだね」
目線を私の手首に置き、キレイな蝶々結びに仕上げる彼の、意図がよく分からないながらも取り敢えずそこは頷いた。
「だからおれも覚悟決めるよ。 義務じゃなくって、真弥のために里を守る。 おれに真弥をくれる?」
伏せ目だったまつ毛を引っ込めて、アーモンド色の真っ直ぐな瞳を私に向けてくる。
───────私の答えなんか、ずっと前から決まってる。