第39章 デートでお給料二週間分
「いい匂い。 なんかつけてる?」
髪につけてるオイルとか?
琥牙は鼻が効き過ぎるから、香水は苦手だって聞いてたからそれは無いんだけど、って、それよりも。
軽く引っ掻くみたいに指先を動かされ、つい、体がぴくんっと反応した。
「だめ…っ」
「少しだけ。 綺麗な真弥見て、出掛けに襲いたいの我慢したんだから」
少し……って。
普通に水槽見てるフリして、器用に人の胸弄るの止めて?
「ドえっち」
「だね。 否定しないよ」
衣服とブラがあるから、直接触れられるほどの強烈さは無いものの、布を通してくにくにと指で挟まれていると、下着の裏地に敏感な部分が擦れてしまう。
「………っぁ」
なんだか変な声が出そうになって、慌てて両手で口を覆う。
「チカンとか意味分かんないって思ってたけど、こうしてると気持ち分かるな。 真弥も?」
「そん、なの…」
「こんなとこでも感じる?」
「感じない。 も、離して」
「下着、それ以上濡れちゃったら気持ち悪い?」
抵抗するには小さな声で、……それからとうとう無言になってしまった私の胸から手を外し、耳元に口を寄せる。
「ふ……帰ってから続きいっぱいしようね」
「………先週いっぱいしたよ?」
里で。 そう反論するとそうだっけ。 とわざとらしくとぼけてみせた。
それよりまたサメ見に行っていい? なんてわくわくした様子で訊いてくる。
全くもう、目まぐるしいったら。
そんな彼の後姿を追いながら、目が離れないのは、こっちもだわ。 なんて思う。