第39章 デートでお給料二週間分
「どしたの」
「真弥の運転想像したらなんだかね……あと水着? あれも駄目だからね。 マンションの中でならいいけど」
何がなんだかで駄目なのか。 そして家で水着着る理由。
呆れるまでは言わないにしても、ついため息交じりになってしまった。
「琥牙ってば。 最近まるで浩二みたいよ。 あと何年かしたら落ち着くのかなあ?」
「おれは元々最初からこうだよ。 結構耐えてるんだけど」
「それ言うなら私も元々こうだもの。 これでも気は使ってるんだよ」
「だから目が離せないんだよね。 ……離れない、の方が正しいかな」
そう言うと私の緩みかけたストールの端を持ち、また厳重にそれをぎゅうぎゅうと巻き付ける。
こんなやり取りも慣れっことはいえ、二人でいるとき位、もうちょっと寛容になってくれてもいいのにな。
「苦しいんですけど?」
そんな私のささやかな抵抗も、まるで自分の方が苦労してるみたいな体で返してくる。
「我慢我慢。 デートって結構大変なんだね。 楽しいけどさ。 で、結局今からどこ行くの?」
「琥牙が行ったこと無いところだよ」
「なんだろ? そんなのあり過ぎて」
色んな意味で仕様がないなあと呟き小さく笑った私に、彼が首を傾げた。
あり過ぎる中でもとり分け彼にとってはレアであろう、私が選んだのはデートスポットとしてはベタな水族館だった。