第39章 デートでお給料二週間分
「貸して」
お洒落なんかそっちのけでぐるぐる巻きにストールを巻かれて、その間なんか違うと思いつつも、面倒なのでなすがままにさせておく。
なのに彼は視線と一緒に眉を下げ、思いあぐねた様子でぶつぶつ呟いてる。
「勿体無いけど。 真弥ってホント困るよ……なんでこんなに可愛くて色っぽいんだろ。 そもそもおれ、自分が面食いだとか思ってなかったんだよね。 これ、もう一枚無いの? 腰の辺りも隠したい」
「………っいいから行くよ? もう!」
これ以上巻かれたら歩く茶巾妖怪だわ。
赤面してるであろう自分の顔を手で扇いで冷ましながら、オロオロと心配そうな表情の琥牙を追い立て、私たちは外に出たのだった。
気温は低いにしても青空に綿菓子みたいな雲がいくつか漂ってるだけの、いいお天気だと思った。
土曜の午前中という時間帯で、駅へと向かう人の数もまばら。
どちらかというと、駅周辺はショッピングモールや商店街を散策する地元の人々で賑わっていた。
「あ、でも洋服に気取られてたけど。 今日は髪もふわふわでいいよね。 真弥は髪質が綺麗だから特に」
そうやって道を歩いてるときも、ひょいと私の顔を覗き込んでは目を細めて褒め倒していく琥牙。
しかしそんなに過剰評価されると、こちらとしては嬉しい通り越して、いっそ恥ずかしくていたたまれない。
「階段それ、ヒールだから危ないね。 抱っこしようか」
「だから、もういいってば!」
相変わらずそんな彼の様子は私に対する好意がダダ漏れで。
どうリアクションすればよいのかわからないままに、つい照れ隠し的な態度を取ってしまう。
だって顔の熱さが引きやしない。
そうしてると通りすがりに、学生らしき若い女の子二人連れとすれ違いざまにくすくすと笑われた。