第39章 デートでお給料二週間分
「アウトでしょ? なんか」
彼がブンブンと首を縦に降り、分ってはいても、そうこられるとやっぱり軽く落ち込む。
「綺麗過ぎて他に見せたくないから。 でも正直おれは見ていたい。 ああ、高速で真弥の周り回ってたら視線を防げるのかもしれない」
琥牙それ物凄く変な絵面だよ。
「そんなの歩きづらいし。 それじゃこれはとっておきの部屋着にするね」
しかも彼ならやりかねなさそうで怖い。
ついクスクス笑いながら、見付けたハサミを持ってシャツを手に取ると、彼が今度は不満げな声を漏らす。
「ええ、止めちゃうの……?」
「もう。 どっちなの」
ふと、困ったみたいに考え込んでる、戸口に立っている琥牙を改めて眺めてみる。
未だ伸び続けてる彼のサイズは現在180cm弱と微妙で、今は主に浩二の高校時代のおさがりを着ている。
今日はハイネックのグレーのシャツに、前に買ったオーバーサイズのカーディガン。
どちらかというと細身で顔立ちが元々端正な彼は、そんなキレイめの服がとても似合う。
「ふむ」
これ、パワーバランスを考えると、チカンに遭いそうなのはむしろ確実に琥牙の方よね。 そう思って頷いた。
持つべきは美形の彼氏。
「よし、これで行く!」
「そうなの?」
決意を口にし、寒くなってきたからってこないだ買ったニット帽を被り、同じものを彼にも購入していたのを思い出した。
それを被せてあげて、さり気なくお揃いだね。 なんて言いながら玄関に向かう。
廊下を歩いてる途中で、後ろからついてきた彼が動揺したような声を発した。
「うわっ……後ろから見ると体のラインとか。 動くと更に。 ダメだ凶器レベル。 鼻血出るでしょそんなの」
「もういいから。 ストール持ってきたし」
大袈裟だなあなんて思ってると、半ばひったくるようにそれを私から奪い取る。