第37章 私たちの牙 後編
「……っこの、女があっ!!」
あとは、思いのほか相手が大き過ぎてすくんでしまったから。
「真弥っ!!!!」
顔の半分に強烈な衝撃を受け、よろけるというか、その勢いのまま地面に叩きつけられた。
口の中が切れたのは分かるが、視界が弾けて耳鳴りがする。
そのせいで起き上がるのに時間がかかった。
「………………ッ」
手探りで地面に触れて、ここが砂地で良かったと思った。
戻ってきた視力の中に血が混ざってるのに気付いて、慌ててそれを両手で掻き回す。
「へ…………いき。 どってこと、無い……」
それよりも浩二。
血の気の多い弟を止めなきゃ。
「ってめえ!!」
「動くな! ……女。 犯されるのがそんなに嫌なら、お前をこいつらに与えることも出来るんだぞ!? 案外伴侶よりハマるのかもなあ? お前らも見たいか」
怒られるのは分かっていた。
けれど、彼が女嫌いなのは誤算だった。
今度は目の前で振り下ろされようとする脚に、咄嗟に頭を庇う。
「っ桜井さん!! 叔父さん、オレそっち行くよ」
来たるべき痛みが無いのに僅かに頭をあげると、二ノ宮くんが卓さんの脚に縋りついて、必死にそれを止めていた。
「戻るから、それ以上は止めてよ」
ダメだ、そう言おうとしたが震えて声が出なかった。
苛立たしげに二ノ宮くんを振り払った卓さんの怒りの矛先が、彼の方に向かおうとしている。
「チッ。 最初っからそうしてれば良かったものを」
「二ノ宮!!」
「浩二どの、いけません!」
おそらく二ノ宮くんが蹴られる音がした。
二度、三度。
「止めて…………」
自分の腕の隙間から、体を丸めて耐えている二ノ宮くんの姿が見えて、彼の方に寄ろうとしたとき卓さんの怒号がそれを押し止めた。
「俺に盾付きやがって……!!!」
二ノ宮くんを、彼の心をそれ以上傷つけないで。
動いて……!
…………なんとか動け、私。