第35章 彼と初めての亀裂
「いや! やめ……」
「………しないよ。 どうせ何百回したって変わりゃしないんだから」
ふっと拘束が緩み、慌てて態勢を整えて距離をとる。
頭に血が上っていたせいか、琥牙の表情からなにかを読み取ることが出来なかった。
「──────それとも、口では嫌がってても期待した?」
「……っ馬鹿!! 嫌い。 私、今の琥牙大嫌い!」
なんでこんな子供じみた言葉を言わなきゃならないんだろう?
ただこれでもかと私を不快にさせようとしている、彼の悪意は伝わった。
そして彼は、最初と同じように窓辺に腰を掛け直し、何事もなかったかのように私を無視し始める。
とてもその場に居られなかった─────…気付いたときには、私は上着とバッグを抱えてマンションを飛び出していた。