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オオカミ少年とおねえさん

第34章 里の特産月の石



敷布団の上にタオルを何枚か敷き、そこに二ノ宮くんを横たえる。
同じ狼姿の伯斗さんと比べても脈が速く、少し熱があるようだった。


「傷のせいだね」

ぬるま湯を浸したタオルで体をそっと拭き、出血のせいで酷そうに見えた外傷は見た目よりも酷くなさそうでほっとした。


「おっさんオレ、平気だよ」


心配して彼を見守っていた山中さんに、二ノ宮くんが声をかける。


「おい…二ノ宮」

「浩二こそ、朱璃様に失礼な口利くじゃないの」

「わはは、構わんよ。 じき人に戻れるのだろう? 安静にして、そしたらまたよく診てみることにしよう」


そんな山中さんに頷き、傷の深そうな一部だけ消毒を施して軽く止血止めに包帯を巻いておいた。


「この度はすまなかった。 私の管理不行き届きだ」


やっと落ち着いて銘々に座り出すなり背を伸ばし、それを深く折って詫びてきた朱璃様に驚いた。


「洗脳に近い状態でこの月に当てられ、うちの若い者が暴走をした。 それで人の世界に降りたのを知り、慌てて伯斗と跡を追ったのだ。 偶然にもお前たちが居て、最悪の状況にはならずに済んだようだが」

「月?」

「そうだったんですか」


まだ人狼の事情に疎い浩二が訊き返したが、詳しくは後から説明することにして、珍しく神妙な様子の朱璃に私が向き直った。


「一緒にいた二ノ宮くんに咄嗟に助けられて、なんとか。 すぐに朱璃様も来て下さったので、こちらはなんともありません。 私たちこそありがとうございます。 ……どうか頭を上げてください」


浩二、朱璃様が頭下げてんのよ。 ぐいと肘を押し付けると彼も慌てて腰を折る。


「俺たちも助かった。 なにせこの方、あんなのとは闘ったことはないから。 詳しい事は知らんが、二ノ宮やそちら方のお陰だ」


二ノ宮くんが怪訝そうに私を見てきたので、私の斜め後ろで横たわっている彼に向けて、鼻先に人差し指を立てて、この場は黙ってとジェスチャーをしておいた。


出入口の戸がカラカラと開いた音が聞こえ、また背すじを伸ばした朱璃様が、若干気遣わしげに二ノ宮くんに目を向けた。


「しかし保。 お前には酷なことを伝えなければならん」

「…………?」

「朱璃様。 一匹連れてきました。 目を覚ましておりましたので」


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