第33章 不倫→バトル→なんで恋?
そうだったとすると、こんな時には本来は琥牙が彼らのような狼を追っていたのだろうか。
彼らとの会話を思い出しながら、私は収束に向かっている眼前の争いを見ていた。
朱璃様たち二人が参戦してから、明らかに向こうの士気も下がったのだろう。
それからあっという間に敵らしき狼たちは動かなくなった。
………なんにしろ、逃げようとしたり攻撃をしようとすれば、『ホレホレ』とでも言わんばかりに、二ノ宮くんや浩二の背後から、朱璃様の鋭い刃先でつつかれる始末。
最後はとうとう動かなくなってプルプルと震えるままになってしまっていたのを、まるでいたぶるみたいで可哀そうだったかもしれない。
地面に横になり、観念した様子のそれらを見回した伯斗さんが細く息を吐いてその場に座った。
「はぁ……大人しくなりましたかね。 生きているとは思いますが。 それにしても、老体には堪えます」
「せめて雪牙位居ればいいものを。 こんなときに、なにを連れ立って篭ってるんだ? あやつらは」
暗い林の向こう側をぐるりと見渡し愚痴る朱璃様。
他方で、倒れている一匹の狼に近付いた伯斗さんがフンと鼻を鳴らす。
「これは最近は特にこちらに楯突いていた輩ですね………琥牙様含め、若衆にとっては厄災ですな。 この月は」
「彼らの獣欲をこれでもかというほど刺激するからなあ。 しかし力は増せども、逆に攻撃が単調なるのは救い」
「──────大丈夫か? コロボックル」
加勢があったといっても、普段は対人に慣れきっている浩二には骨が折れたことだろう。
両腕を腰に当て、呼吸を整えるごとく深く息をついていた。
「コロ………」
「伯斗構わん。 ああ、大事無い。 それより保の方が」
浩二の口の悪さに物申さんと彼を牽制しようとする伯斗さんを、朱璃様がやんわりとたしなめた。
「真弥、二ノ宮看とけ」