第33章 不倫→バトル→なんで恋?
そうしつつジリジリと彼らに近付いていく私に、狼たちは警戒しつつ後退りをしている。
その時に彼らと目が合い、私が合図のために、微かに頷いた。
もう少しで浩二が出てくるから待ってね。
「……なに、こんなとこに狼って……それ以上行くな真弥っっ!!」
その二匹のうちの一匹が後ろ脚で地面を蹴って、私の視界の上を跨ぐ。
浩二が車から飛び出して後ろから駆けてくる気配───────と、頭上で何かが激しく衝突する音がした。
反射的に目をつぶってしまい、それと同時にギャン!!という痛々しい動物の鳴き声が私の耳に飛び込んでくる。
演技派の二ノ宮くんが到着か。
でも、少し早くない?
そう思うのと、浩二に強く腕を引かれたのが一瞬だった。
「真弥、後ろに下がれ!」
「え───────…」
私をかばうように前へ出た浩二の背中が見えて、背を着いたすぐ後ろは岩場の壁だった。
弟の肩越しに見える目の前には、道路に横になって倒れてる新しく現れた狼と、相変わらず先ほどからの二匹。
「え…っと……?」
倒れてる方、少し小柄なアレって、二ノ宮くんだ。
あなたどんだけドラマチックに仕上げるつもりなの?
立っている一匹が、そばにいる二ノ宮くんを見下ろしている。
彼が反撃しようと立ち上がる素振りでも見せたら、すぐにまた攻撃でもしそうな勢いで。
もう一匹はそこから5メートルほどの距離にいる。
ちょうどそこの崖側の一匹と二ノ宮くん、私と浩二。 それらが三角形を作っているような形だ。
「大丈夫だよ。 浩二、怖がりすぎ」
そう言ってポン、と彼の肩を叩き私はまた狼たちの元へ踏み出した。