第33章 不倫→バトル→なんで恋?
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私はそんな昨晩の、二ノ宮くんとの会話を思い出していた。
そして浩二はすでに薄らと気付いているらしい。
二ノ宮くんのいう通り、丁度いい頃合いなのかもしれない。
諸々を考えながら私は小さく呟いた。
「まあ、隠しごとはこっちも全員苦手だしね」
「なに呑気に独り言ってんだよ真弥。 現状把握してる? あれ、野犬…にしてはデカいな。 急に車の前に飛び出してきやがって。 動きゃしねえ」
呆れ顔で私を見たあと、眼前の狼にクラクションを鳴らしたり、エンジンを吹かしてみるも全く動じないそれらに浩二が舌打ちをした。
「そんなの私がどかしてあげるわよ。 こうみえても私はお姉さんなんだから」
「……っい! 勝手に降りんな、危ない」
ドアを開けて地面に足をつけると、車から少し離れた場所に、こちらに向かってうなり声をあげる大きな二つの影が見える。
里で見たことの無い、若い狼だと思った。
………私は彼らと新たに仲間になるのかな。
そう思うと、つい口元が緩む。
元々動物は大好きだし。
それで、
初めまして。 真弥といいます、ご苦労さまです。 などと声をかけようとしたが、はっと思いとどまった。
ダメダメ、思い出して。
ええと私のミッションは。
………絶対絶命の状況を作るのね!?
「きゃあああああああああっ!! 浩二、助けて! これ、犬じゃない!」
「バカ真弥!! こっち来いって!」
弟が車窓から身を乗り出し、慌てた様子で私に呼び掛ける。
「やだ! やめてえっ!! さてはあなたたち、悪い狼だね!? もちろん良い狼もいるんだろうけど、いやむしろ狼って、基本的に凄く良い人が多いけど!!」
少し個人的感情が入ってしまったかも知れない。
まだなにもされていないにも関わらず大声で騒ぎ出した私に、狼たちがビクッと体をこわばらせた。