第33章 不倫→バトル→なんで恋?
****
「久しぶりじゃね? 真弥がうちの道場来るって」
「ちょっと二ノ宮くんに急用があるついでに。 お師匠さんにも最近ご挨拶してないし。 それに彼、元々はこちらの知り合いだから、気にもなってて。 どう、彼。 役に立ってる?」
翌日私は仕事のあとに、家とは反対方向のJRに乗り、最寄りの駅からは浩二が車で迎えに来てくれた。
車内で他愛もない話をしながら、私は浩二が昔からお世話になっている道場に渡す予定の、お土産の包みに手を置いた。
「立ってるってもんじゃねえな。 奴が手ぇ抜いてんの気付いてんのは、俺と師範位だけど……」
前を向いたまま言いかけて、それを途中で止めるとか、彼にしては珍しい。
気になって続きを催促すると、それでも歯切れが悪そうに浩二が口を開いた。
「どしたの?」
「良い奴なのは分かる、認める。 けどあれ、ホントに人間か?」
今度はこちらが言葉に詰まる。
少しの無言ののち、浩二がそれを振り払うように笑いを洩らした。
「って、ハッ。 バカみてぇな質問…うわっ!!?」
道場にいく途中の、ちょっとした峠みたいな山道に差し掛かってしばらくだった。
真っ暗な中に車のライトに照らされて、いきなり黒い影が目の前に立ちはだかり、浩二が急ブレーキをかけた。