第33章 不倫→バトル→なんで恋?
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『今琥牙さんいないの? んなら丁度いいや』
そんな二ノ宮くんが先に言った通り、私は仕事の帰り道、浩二にLineを送った。
晩秋の、殆ど葉の落ちた木々や寒々とした空は見るものもなく、相変わらず灰色のビルの頂上が年中高さを競っているだけ。
その間を噴き上げるような木枯らしに、無意識に足早になる。
『明日の夜? OK、いいぜ』
すぐに返信が帰ってきて、それを二ノ宮くんにも伝えたあとで独り言を洩らす。
「こんなんでホントに上手くいくのかなあ?」
彼のあの軽さが気になるのよね。
とはいえ、軽いだけじゃなく、二ノ宮くんは案外思慮深いところも、情もある。
人って時間をかけて話さなきゃ分かんないものだとつくづく思う。
今晩は帰ってもどうせ一人だから、適当にデリでも買って済まそうと、私はお総菜屋さんの自動ドアをくぐった。
週末には琥牙が帰ってきてくれればいいなあ、呑気にそんなことを思いながら。