第33章 不倫→バトル→なんで恋?
これまでの血の繋がりを絶ち、今後実家の家族に多大な心配を掛け続けることを想像すると胸が痛むのは確か。
「それね。 ちょっとは悩んでるのよね、実は。 まさか実情話すわけにもいかないし」
「オレはそんなに構えなくってもいいと思うよ。 要は桜井さんちで実権握ってんの、浩二くんでしょ」
「まあ、そうだね?」
妹たちに取っても実質、浩二が父親みたいなものだし。
「あの子なら、こっちに引き込んじゃったら? いっそのこと」
「は? 確かに浩二って、女っ気無いけど雌狼は無理よ」
こっちにって。
およそ非現実的とも思われる彼のけろりとした発言に、つい飽きれがちに言う。
「そうじゃなくってさ。 いいアイデア思い付いたんだよ。 今桜井さんに恩売っとくのも悪くないしね」
「……なんなの? それって」
「まあ、その前にここそろそろ出ようよ。 守衛とか回ってきたらヤバい」
彼に背中を押され外に出て、私たちは同じ階にあるフリースペースのソファへと移動した。
向かい合わせになった私はカフェオレの紙コップを両手のひらで包みつつ、胡散臭げに彼を見ていた。
そんな私に二ノ宮くんは動じることもなく、彼のアイデアとやらを語ってくれたのだった。
「その代わり、これ成功したらさ。 オレが帰ったら楽なとこに配備してよ」
──────そんな交換条件付きで。