第33章 不倫→バトル→なんで恋?
「彼を馬鹿にしてるとか、そんなんじゃあないんだ。 けどやっぱ、自分が今後付いてく男ってどんなもんかって、確認しておきたかったのね。 この目で」
「それも吹っ切れた?」
その前に一瞬ばつの悪そうな顔をしたものの、率直な口調で彼がそれに答える。
「そだね、お陰様で。 全然相手になんないことは。 それから、あの人ならオレでも役に立つのかなってのも、なんとなく。 桜井さんたちが向こうに行ったら、そのうちオレもそっちに帰るよ」
「えっ。 そうなの?」
彼の意外な発言に驚いた。
「ん、そのつもり。 もう半端はやだなってさ。 で、運が良けりゃあそこで伴侶に出会えるかな? とか。 でも最初は辺境の警備とかになるんかなー」
嫌そうにポリポリと頭を掻き、そのあと思い付いたように目を上げて訊いてくる。
「ところで桜井さんさ、自分の家族には黙ってくの?」
私が琥牙の伴侶となって向こうに行くということ。
両方は選べない、それは分かっていた。
それでも夏の日に浩二の暴言から琥牙を庇ったときから私の気持ちは決まっていた。
けれどそれは、なんの説明もせずに、ある日私がこの世界から消えてしまうことに等しいのだろう。