• テキストサイズ

オオカミ少年とおねえさん

第33章 不倫→バトル→なんで恋?




「いくらこっちに溶け込もうとしてもムリだなって、オレ、昔は随分悩んだんだよね。 これでも」

「そうなの……そんな風には見えなかったよ。 いつも二ノ宮くん明るいから」

「今はもう吹っ切れたからさ」


そうはいってもそこにはきっと、私には考えが及ばないほどの苦労があったのだと思う。

導いてくれる人もいなくって、そんな中でこの人は、自らの立ち位置を築いてきた。
二ノ宮くんという人は本当の意味で誇れるものがあるからこそ、一見、色んなものに従属してるようにみえても挫けないのだろう。


「そっか……大変だよね。 でも琥牙も時々悩んでるよ」


目尻に溜まりかけた水粒を誤魔化したくて他の話を振ってみると、いつも通りの、いかにも屈託のない様子で彼が言う。


「いやあの人、あんま狼っぽくないよね。 しかもこっちに来て、まだ一年やそこらでしょ。 で、ちゃんといい伴侶見付けてさ。 自分のために一生懸命なってくれる女って、まだ出会ったことねえわオレ」

「そんなことないと思うよ。 二ノ宮くんが気付いてないだけかもよ?」


実際二ノ宮くんはモテるし。 本心で言ったのだけど、彼は腑に落ちないような表情をした。

ふと気付くと、廊下からのわずかな光が漏れてくる以外は光源がなくなり、外ももう真っ暗になりかけていた。
そんなブラインドの向こうに視線を移し、陽が落ちるのが早くなったなあなんて思う。


「だから琥牙に構うの? そういう、色んな理由を含めて」

「昨晩のこと? あー……まあ、良くないんだけどね。 いちおそれなりの覚悟はしてったつもりだよ。 いざ対峙したら、向こうに全く殺気無くって逆に笑えたけど」


普通なら、彼らの世界では殺されたって文句は言えない。 琥牙はそう言っていた。




/ 506ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp