第33章 不倫→バトル→なんで恋?
「やっても痛がって泣かれるのが殆どで、逆にガバガバで気持ちよくないか。 そんなことしてる内に具合のいい受け皿見付けて、もうそこに収まっちゃったってゆーか。 あ、ちなみに人姿でやんのも結構きもちーよ」
「それって獣か」
「琥牙さんとはチャレンジしたことないの?」
「ございません」
前言撤回。
やっぱ変態じゃん。
「受け皿ね………それだけじゃないと思うけどな」
ふう、と息を吐いた私に、ん? と、好奇心交じりとでもいうふうに、二ノ宮くんが悪戯っぽく片眉を上げた。
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───────そして冒頭の場面に戻り、私たちは密室で下らない性談義をする羽目になったわけだった。
「あはは。 やっぱ桜井さんって面白いね」
何が面白いのか分からない。
むしろ私の方が常識人だと思うけど。 そう言う私から半歩後ずさり、ダンボールの端に腰を掛けた彼は機嫌よさげだ。
「そういうのは置いといてさ。 でも、相手がなんだろうと、伴侶を持つ気はないの?」
余計なお世話かも知れないけど、琥牙の里では成人した狼は伴侶や子を持つのは当たり前、とされる風習なはずだ。
そんな私の言葉に気を悪くするわけでもなく、二ノ宮くんが今度はやや神妙な面持ちで答えた。
「桜井さんだから言うけどぶっちゃけね、その気はあるんだよ。 でも、オレみたいのは人としても狼としても中途半端でさ。 だから琥牙さんみたいのはちょっと憧れんだよね」
「憧れ?」
この人って最初明るいだけかと思ってたら、意外と色んな表情があるんだなあ。
つられてじっと耳を傾ける私に、二ノ宮くんが静かに話し続ける。
「同じ人狼で、向こうの方が複雑な状況だったのに、真っ当に育ってんなーって思うんだよ。 多分、周りの環境と、朱璃様が人間だったせいだろうけど。 オレは親の顔も知らないし、ずっと自分の正体隠して生きてきたから」
「でも、叔父さんがいるんじゃないの?」
「就職とか諸々、諸事情で便宜的にそうしてるだけ。 出身が同じだからなんらかの関係はあるんだろうけど、血縁は無いと思うよ」
血は繋がってないのか。
そう言われると確かに、あの隆々として瞳の色も珍しい卓さんと、ほぼほぼ日本人らしい外観でかつ、小柄な二ノ宮くんは異なりすぎている。