第32章 Plan - Do
長兄。 ハーフの人狼、血統もだろうか。 それらに含まれた琥牙の高い霊力が、あの鋭敏な感覚や身体能力にも繋がるということだろうか。
「人狼の力の源であり、この月の光に左右される。 私が今補っているのも使い過ぎた霊力を」
「あっ! 卓さん」
話の最中で、彼のことを明後日の方向から唐突に思い出した。
「……なんだ、いきなり大声を出すな。 卓……? 私が体を借りていたあの男か?」
供牙様が居なくなってからパワーアップしたというあの人のことを。
供牙様の使いすぎた霊力、その行方はもしかして?
「実はあの人が、里でよからぬ事をしてるという噂があるんです」
「ほう? 私は本体の方には全く介入はしていないから、あの男の本性までは分からぬが」
「供牙様の影響で強くなった、とか? そんなことってあります?」
琥牙が牙汪を取り込んだように。
そうはいっても、供牙様自身もその辺りには経験がないせいか、断定的な言い方を避け、一言一言自分の考えを小さく区切るように私に話してくれる。
「それはどうか……もしもそうあっても、おそらく一時的にだと思うが。 それもさっき言った私の霊力の残留かな。 だがあれ位なら効力を発揮するのは、同じくその恩恵のある我らの里に限ろう」
文節の間に、人と話すには若干長い沈黙があり、彼の声と相まってまるで唄でも諳んでるみたいに聞こえる。
「………里…」