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オオカミ少年とおねえさん

第32章 Plan - Do



そう思いつつこてん、と頭を彼の胸にもたせかけると、寝る前までの慌ただしかった今日の出来事なども、じんわりほどけて心が休まった。


………こうやっていると、あの里の朝を思い出す。

『俺の狭い胸でも貸そうか?』
そんなことを言って、こちらの我儘にも関わらず、私を暖めながら走ってくれた彼、二ノ宮くん。

私はやっぱり、彼が悪いことをする人だなんて思えないんだよね。


むしろ琥牙の方がおかしいよ。

里から帰ってきて落ち着いたと思ってたら、今晩は感情の起伏が目まぐるしいったら。


「供牙様も二次性徴やらの時は不安定でした?」


愚痴交じりにぼんやりとそんなことを供牙様に訊いてみた。


「なんだ? 藪から棒に」

「琥牙が、丁度そんな時期らしいです」

「ああ、そういえばそうだな。 昔のこと過ぎて、うろ覚えだが………私はあれよりも獣性が強かったから、しょっ中飼い主を困らせたり、まだ幼かった加世を泣かせたと記憶している」


目線を斜め上の空に移してから、薄っすらと微笑んで教えてくれる。
供牙様にもそんな頃があったとは意外だった。

それから彼は穏やかに、先の私の言葉を拾った。


「不安定、それはそうだろう。 琥牙はその出自から元々内省的な所がある。 それに何より真弥。 お前がいるから」


いくら先ほど威勢よく啖呵を切った私でも、もしも供牙様にそう思われてるのなら、かなりショックだと思った。


「………彼にとって、私は良くない存在なのでしょうか」


おそらく彼らの世界のことを最もよく知るこの人に。




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