第32章 Plan - Do
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『もう少し月の力が落ちる二、三日で戻りますから──────……』
去り際に伯斗さんがそう言い残していった。
思えば、不思議なものだ。
私たちがいるこの星は、月の引力に導かれ、波の表情さえ変わるという。
月明かりが溶けた海の世界では一斉に産卵が行われる珊瑚、それから次々と誕生する地上の命。
そういえば、美緒と莉緒が産まれたのも満月の夜だっけ。
まだ私が子供だった頃のそんなことを思い出した。
太陽の光を欲するほどに、明るく輝いてみえる丸い月。
そこから伸びる光の帯は、見えない生命の道しるべのようにも見える。
それはどんな動物にも平等で、私たちは結局きっと、同じところから発したのかもしれない。
もしも地上がいつもここのようなら、もっと数多の生命が生まれてたんだろうか。
ずっと彼を照らし続けている、もう一つの月を見上げながらそんなことを考えていた。
「供牙様………?」
私に背中を向けて座している、その姿を見付けて嬉しく思った。
今日は千客万来だなあ、なんて。
その中で、供牙様に会いたいと思っても、ここは気軽に来れる所じゃない。
「真弥です。 以前はろくにご挨拶もせず帰ってしまって」
話しかけて、彼の薄灰色の着物の肩が微動だにしないのを不思議に思い、そろっ、と彼の前に回ってみた。
───────寝てる……?
緩く閉じられた口許と、寛いだ様子に伏せた瞼。
ていうか、寝るんだ?