第32章 Plan - Do
「琥牙」
ご機嫌がよろしくないバージョンの。
暗いキッチンの入り口に立った彼が、腕を組んで私たちを見下ろしている。
そして間髪入れず、頭ごなしに言い放った。
「許さないよ。 遊びじゃない」
もう、何なの?
うちの浩二じゃあるまいし。
単に妬かれる位ならいいけど、それにしても今晩の彼は私にあれこれ言い過ぎだと思う。
「琥牙にそこまで口出す権利なんか」
「ある。 真弥になにかあったら真っ先におれは真弥の元へ行ってしまう。 両方は持てないって言ったでしょ?」
「来なくっていいよ。 自分の身は自分で守るもの」
別に虚勢ではなく、普通にそう言った。
すると別に馬鹿にしてくるわけでもなく、普通に目を見張って驚かれる。
「それ、本気で言ってるの? 普通に生きてるだけでも危なっかしいのに」
そっ、それは事実かもしれないんだけど。
意地になってる気がしないでもない。
けれどここは引いちゃ駄目なのだと私の意志が告げている。
「それでも来ないで。 琥牙は自分の仕事を優先してよ。 守られてばかりなんていやだもの」
雪牙くんが私たちを左右に目で追いながら、ことの次第を見守っていた。
「これだけおれたちと居て分からない? 保くんだって、一般人からすれば充分脅威なこと位」
「じゃあここで一人でじっとしてろっていうの? 私はそんな人生やだよ。 そんなに私が邪魔なら、好きにすればいい! 縛り付けるなり殺すなり、すれば?」
琥牙が表情を強ばらせる。