第32章 Plan - Do
「里では週末に来る彼を、一部の者はまるで支配者のように崇めております。 近ごろでは、若い者たちは朱璃様に対しても反抗的な態度を取る始末」
眉らしき骨格を寄せながら、伯斗さんが神妙そうに『近頃の若いもんは』的な表情をする。
「それですから早く琥牙様に戻っていただきたいのです。 そして、長としての琥牙様の最初の仕事は、あの二ノ宮たちを正当な理由を以て排除することになります」
「排除………」
伯斗さんもやはり、そんな考え方は狼だ。
雪牙くんも彼の言葉に自然に頷き、琥牙はどこか浮かない顔をしている。
でも排除って。
あの二ノ宮くんだよ?
懐疑的とまではいかずとも、信じられないという私の顔を見て、琥牙が言葉を繋げる。
「保くんまでそうとはまだ分からない。 けど、最近やたらおれらに接触してきてたのも、なんか不自然でね。 今晩でも……たとえ腕試しだろうと、同じ集団に属するならなおさら、上位の狼に無理矢理仕掛けるなんて。 本来のおれたちの世界では、その時点でおれに殺されてもおかしくないんだよ」
その位のことを、あの彼が知らないとは思えないんだ。 そう言う琥牙の話を聞きつつ、私はやはり首を捻ってしまう。
生まれ持った血ではなく、自分を試してみたい──────そんな心の内を二ノ宮くんが、いつか私に話してくれた。
彼の場合は、単に調子ぶっこいてるだけだと思うんだけどな。
「里の人たちのそれって、琥牙に威厳がないからじゃないのかなあ?」
そうやって首を斜めにやりながら言うと、なにかこの場の空気が変わったような気もするけど、気のせいよね。