第31章 役立たずな言葉と饒舌な体*
「たまには、ね。 いいじゃない?」
なのに普段どおりの口調で言葉が勝手に出てきた。
琥牙が私の手を引き寄せ、握られた指に彼の手のひらの力が篭もる。
「………ッ」
折れそうな痛みに顔をしかめたけど、やっと顔を上げられたからそれで良かった。
口を横に結び、私を見据えて彼が言う。
「おれはこれしか要らない」
こんな風に、琥牙に求められたり好意を示されるのは、もう数えきれないほど。
真っ直ぐ過ぎる彼に、私はちっとも慣れない。
まともに彼の顔を見れなかった。
「………そう? 私は他の人が触れた体なのに?」
その代わりに自分を重ねた彼の手を胸に置き、それを自ら揉むように動かす。
こんな風に触れられたんだよ。 そんな言葉を彼に向けた挑発的な視線に変えて。
「真弥」
立ち上がり、荒々しく私を塞ぐ唇。
その間を割ってくる舌に、自分のそれを触れさせた。
途端に、自分の体を襲う熱で膝が崩れそうになって、腰に回された腕が苦しいほど私を締め付ける。
何度も角度を変えて、口内をまさぐり吸い付いてくる口付けは息が続かなくても許されなくて。
やっと離れた瞬間に目を開き、私の滲んだ目に映った彼は冷たい炎のようだと思った。
「面倒臭い。 犯して欲しいんならそう言いなよ」
戦う相手の体。
接する人の心情。
そして恋人の擬態まで琥牙には分かるんだね。