第31章 役立たずな言葉と饒舌な体*
彼は丁度私が通り過ぎようとした、コンビニエンスストアから出てきたところで、朝食らしきものを抱えていた。
確か運送業をやっていると聞いてる。
供牙様と違いこちら本体の『中』の人には、それ程面識がない私は軽く頭を下げてお辞儀をした。
「お仕事ですか? 早いんですね。 ご挨拶にも行かず、すみません。 その節は私の妹たちがお世話になりました」
「全然構わない、保からくれぐれもって聞いてたし。 ああ、今朝は五時起きだ。 桜井さんは今から会社なのかい」
はい、そういいつつまじまじと眺めるとやはり供牙様の時とはまるで雰囲気が違う。
中身が違うだけなのに別人だ。
初めに出会ったのが雪牙くんとの対峙の時だったからか、今みたいな笑顔でも、どこか荒々しさを感じさせるような……
「でも最近は、琥牙さんのお陰で助かってる。 本来繁忙期は寝るヒマもないからさ」
「琥牙?」
「軽く五人分は働くし、あれじゃ儲かるのはウチの方…え? 知らないのか?」
「働いて……二ノ宮さんの所で?」
「短期の約束だし、保へはうるさいからって彼から口止めされてるけど、何も聞いてない? 桜井さんって彼の伴侶だろ?」
もしかして、こないだの浩二の話を真に受けて?