第30章 雄として男として
『排除』
二ノ宮くんの鷹揚な口調とは真逆なその言葉にぎくりとした。
彼らの世界ではそうなんだろう。
身を呈して庇い合う。 あの穏やかな供牙様だって、その点は変わらない。
……けれど本当は、私たちだってそうなのだろう。
もしも彼らみたいに強かったら。
そして人ではあっても力のある…少なくともそんな自負のある、浩二はそんなことを言われて黙ってる弟では無い。
立ち上がりかけた浩二を落ち着いた様子で見上げている二ノ宮くんも、居住まいを正して隙を押し隠す。
しんとした、そんな一触即発にもなりそうな場に、静かな声と表情で応えた琥牙だった。
「保くん、いいよ。 彼は正しい。 身内に関する思いもおれらと変わりない。 でも、時間をくれる? どうしたって、おれにも真弥しかいない」
「…………」
その言葉の続きを待って、それきり黙り込んだ琥牙に浩二がやる気を削がれた様子で、息を吐きながらどかりとソファに深く腰をかけ直す。
「なンか、事情でもありそうな言い方しやがって。 こっちは気は長くねえぞ」
「ありがとう。 おれ、弟の他に浩二くんと少し似た人を知ってるよ」
それは牙汪のことだろう。
にこりと自然な笑顔を返す琥牙を横目に見つつ、何だか私の胸にじんと滲む感情が去来した。
「………ハッ、読めねえヤツ」
琥牙もきっと、私の弟をもう『身内』に近いもののように思ってくれているのだろうと、そう感じたから。
加えて、浩二の側も親愛に近い感情をそんな琥牙に持ち始めている。