第30章 雄として男として
お待たせしました! そんな店員さんの声と共にテーブルに置かれたビールジョッキに気を取られ、その会話が一時中断となった。
一つだけコーヒーカップが混ざってるけど、改めて乾杯をし、仕事上がりのアルコールで銘々の喉を潤す。
「腕って、浩二くんもそういうの分かるんだ?」
二ノ宮くんが先ほどの会話から当たりさわりの無い所に興味を示すと、浩二は斜め上に視線を移して少し首を傾けながらいい飲みっぷりでジョッキを口に運ぶ。
「そりゃーま……お前もこいつと弟なんかと同類なんだろ?」
「ちょっとだけ違うけど、へー……面白いね。 そいえば桜井さんの祖先ってアレだもんね。 全く無関係でもないのかあ。 でもさ、心配無いよ。 琥牙さんはなんてったって俺らの」
「保くん」
祖先、その辺りのワードからヤバいと思っていたら、その前に琥牙が二ノ宮くんの話を遮った。
この人って、時々迂闊なのよね。
その自覚はあるのか二ノ宮くんが直ぐにその口を閉じた。
「は、お前らの?」
不審な目をして私たちを見回す浩二。
私と琥牙は、この空気何とかしろ的な視線を二ノ宮くんに送っている。
「お前のなに?」
「……アイドル的存在?」
「…………」
「…………」
いくら何でもそれは無い。
思いっきり棒読みだし、しかもまた疑問形だし。