第30章 雄として男として
「てかさ、二ノ宮が安心つのは何となく分かったよ。 莉緒が帰ってからもしばらくボケーッとしてやがったけどさ。 んで聞き忘れたけど、琥牙って仕事何してんの? 学生?」
これは世間一般的にみると、なかなか痛い質問かも。
琥牙って、あの朱璃様に育てられただけあって、話してても学力には問題ないのだけど、人の社会で逞しく生きてきた二ノ宮くんとは違い、やっぱり少し世間離れしてるし。
狼の学校なんて無かったんだろうし。
「仕事……そうだね、うーん。 おれも仕事しようかな」
「琥牙さんなら何でも出来ますよねー裏稼業とかバッチリ」
「はあ?」
けれど浩二にはそんな事情は知ったこっちゃ無いわけで。
呑気に答えてる二人の代わりに私がフォローを入れる。
「琥牙は実家が裕福なのよ。 そう。株とかと、投資とか?」
苦しい。
お金に困ってないのは確かだろうけど、後者が苦しい。
投資する狼。
「飲めなくっても、今ならバーテンとかでも似合いそ。 でもそしたら、女の子だらけの店んなるね」
「あのな……もうちょっと地に足着けようぜ? いくら腕が立つっても、フラフラしてる奴に真弥はやんねーぞ」
あっけらかんとする二ノ宮くんに対して浩二は定職以外、ましてや夜の仕事なんか認めない、と言わんばかりだ。
それに意外だったのは琥牙の反応。
明らかにしゅんとした様子で小さくなる。
「うん、そこはごめんね……」
「浩二ってば。 あんたまた」
彼らと私たち人間の基準は違う。
それでもそこを知らなくっても、他人に上から目線でお説教ってどうなの。