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オオカミ少年とおねえさん

第30章 雄として男として



それにしても。
うちには一応父親は居るんだけど、月に二度顔を見れればいいところ。

お陰で影が薄い薄い。
最近は髪も薄…そんな父の面影も、二ノ宮くんの明るい口調でフサアと霧の彼方に消えてった。


「あはは、いーよ。 仕事のついでだって。 ああ、それとさ。 内示はまだだけど、来月秋の人事異動で昇進決まったんだよね。 桜井さん、オメデト!」

「私?」


へー! 浩二がヒュー、と口を鳴らす。
初めての昇進というより、二ノ宮くんって確か人事課だっけ、そんなことを改めて思い出した。


「その歳で課内主任って順当でしょ? 仕事では不思議とミスも少ないし、勤務態度も問題ナシ」

「おめでとう、真弥」


そんな二ノ宮くんは私よりひとつ下だというのに、既に春に昇進を果たしている。
これは彼のコミュ力の為せるわざだろう。


「うわ、祝杯してー。 っか、ビール飲みてえな」

「うち泊まれば? それか夜中でも朝でも休んでけばいーよ」


元々体育会系の浩二はかなり飲めるタチ。
祝い事には酒が付き物、そんなキャラである。

マジで? 一言言ってビール三杯がオーダーに追加された。
飲まない琥牙に気を使い、なにか料理でも追加すれば? そう勧めたら彼が嬉しげにメニューを見始めた。

可愛いなー、実はお腹空いてたのね。
雪牙くんほどではないにもしても、実は琥牙も割とよく食べるのだ。


ほっこりとした気分で窓辺に視線を移すと、先ほどのイチョウの一葉は相変わらずフルフルと身を揺らせながら枝にしがみついてる。

他の葉っぱたちはお互いに風雨の煽りを分散させて、かたまりながら身を寄せあってるというのに。


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