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オオカミ少年とおねえさん

第5章 この後掃除が大変でした



私の隣辺りから禍々し……もとい物々しい空気を感じて、恐る恐る視線を移すと表情の無い琥牙。
何回目かそれを見た私には分かる。

また怒ってる。 物凄く。


「雪牙、おまえ帰れ」

「兄ちゃ……」

「もうここに来んな」

「に、兄ちゃん。 俺は兄ちゃんの為に」

「おれが誰選ぼうが勝手だし、真弥を悪く言うのは許さない。 そもそも最低限の礼節も恩義も知らない奴はおれの弟じゃない」


静かな怒りを滲ませて突き放す。
雪牙くんはその大きな目に涙を溜め膝の上の握り拳がふるふると震えている。
どうやらツンツンツンツン少年はブラコンらしい。


「ち、ちょっと琥牙」

「琥牙様……お気持ちは分かりますが」

「あと伯斗。 こんなとこまで雪牙連れてくるおまえもおまえだよ。 デカい野良狼が二匹もウロウロしてったら周りが騒ぐ。 雪牙を父親みたいな目に遭わせたいの? いいからまとめて出てってしばらくおれらをそっとしといてよ」

「……も、申し訳ございません!」

「兄ちゃん、俺が伯斗に無理言って連れてきてもらったんだよ」


「まだ同じ事言わせる?」


琥牙の抑えた迫力に二人が無言になった。
伯斗さんの耳はぺたんと寝てるし雪牙くんも顔を真っ赤にしてとうとう泣きべそをかいている。

彼らの力関係は分かったけどこの空気は何ともいたたまれない。


「あ、の……お二人共。 今日の所は」

「はい……」


琥牙が床に足をついて立ち上がりくしゃりと頭を搔く。 決まりが悪い、というか複雑そうな表情だった。


「……おれシャワー浴びてくる。 ごめん、真弥あと頼める?」

「ん……」


きっと頭を冷やしたいんだろうと思った。
先ほどは私の方が少し腹が立っていたけど、怒る側も気持ちが滅入って疲れるものだ。


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