第29章 午後11時。愛欲の奴隷*
そんな卑猥な言葉を、最初の時とは違ういつもの様子で耳に吹きかけてくる。
答えるほど余裕のない私の反応をじっくりと探る。
「っ…こ…牙……気持ち?」
「ん…?」
押し寄せる波をぐっと堪えて、その時、乾きかけては溜まって伝っていた頬のしずくを指先で撫でられる感触がした。
「いい? …私…みたいに、感じる?」
彼の手を取って私の方に引き寄せようとするけど、琥牙の体は動かない。
私を見下ろしている彼の姿がチカチカ明るく瞬いて、今日が過ぎたことに気付いた。
……私はきっと贅沢なんだ。
これ以上なんてないのに。
だけど、思ってしまう。
ずっとこれが続けばいいのに。 なんて。
あんまり急に変わっちゃやだよ。 また彼が、どこかへ黙って行ってしまいそうな気がしてそう呟くと琥牙の口元が緩んだ。
「……こうしてる時だけは、おれはおれで良かったって思うんだ」
「…………?」
繋がってるところに彼の手がついと伸びて、私の割れ目の上でおそらく膨れ上がり、敏感になりすぎている肉芽に指の腹が触れた。
その強過ぎる感覚に一瞬ひっと声を発して、お尻が浮きかけそれでも充血した表面が、ザラついた皮膚に遠慮なく触れられる。
「さっきおれの触って、わかったでしょ? もっと訳わかんないくらいに感じてよ。 そしたらこっちも、もっと悦くなる」
ぬちぬちと繊細なマッサージをするように肉の芽を弄られて、また急速に高められそうになる。
原始的で、直接な欲望。