第28章 桜井家の最終兵器
ずっと彼に我慢させてたらしい私。
だからこういうことはちゃんと自分から言葉にして言わなくちゃ。
普段は私からは積極的に誘わなかった。
なので、ほそほそとそんなことを言った私に彼が意外という顔をした。
「どうしたの、急に?」
「私実は……里に居た時、琥牙たちの体のこととか、色々聞いたのね」
体って…そんな風に呟きつつ空に目を泳がせ、なんとなく警戒するような顔をした。
人づてに聞いたなんて、あんまり気分は良くないだろうけどさ。
あ、混ぜすぎてサラダのひよこ豆が潰れて死んでる。
「人狼って本当はもっと、ちゃんとしないと良くならないとか………」
「それ、誰が言ってたの」
朱璃様。 そう言うと、うわあ……と乾いた声を出した。
嫌っている訳ではないけど、あのパワフル過ぎる朱璃様に対して琥牙はどこか苦手意識があるようだ。
もっとも、母親に対する年頃の息子なんて大概こんなものかも知れない。
「普通、そんなこと真弥に言うかなあ。 ホントあの人って…逆に萎えるんだけど。 ふうん、でも」
「なに?」
冷蔵庫を開け、昼間彼がデパ地下のリカーショップで買ってきてくれたスパークリングワインのラベルを眺める。
チリ産の白。そういえば私、前にカヴァが好きだって言った覚えがある。
それと遠からずな、お酒を飲まない癖に心憎いセレクションをしてくれる。
こういうのも彼らには香りで判別つくのかな。
そんな事を思って感心してると琥牙が私を見て聞いてきた。
「それじゃ、もう遠慮する必要ないの?」
「…………」
「真弥、そのつもりで言ってきたんだよね。 違うの」
割と真顔の彼にドキリとした。