第28章 桜井家の最終兵器
あれから一週間近くが過ぎ、ようやく平穏ないつもの生活が戻ってきた。
仕事終わりの夜。
それで休日である明日の朝は、少し寝坊をする予定。
久しぶりに二人っきりで週末を楽しもうと、カウンターに並んでちょっと凝った食事を作りながら、私たちは夕食後は映画を観ようとか、明日はどこかに出掛けようとかああだこうだ言いつつプランを立てていた。
「あれ? そういえばでも、ドライブ行こうとかいう話もあったよね」
今晩のメインディッシュの、香ばしい香りがするタンドリーチキンを器に盛りながら、ふと思い付いたようにトングの手を止めて琥牙が言う。
「……あれね。 浩二から今週末にって誘いはあったけど、結局お昼休みに断ったのよね。 ん、美味しそう。 さすが琥牙、チキンの焼き加減最高だね!」
「そんなことない、こういうのは真弥の味付けがいいんだよ。でもなんでまた、断ったの?」
なんでというか。
だって琥牙がせっかく戻ってきたのに、帰ってきたなり気が抜けたのか私の方がバテちゃって。
その翌日からはなし崩しに仕事が忙しかったせいで、残業続きでやっと迎えた金曜日。
もっと二人の時間を作ろうなんて思ったんだけど。
「…………」
どういう言い方をしようかと考えながら、うつむき加減になり菜箸でサラダをバサバサ混ぜていたら、彼がいつも通りなんとなくは察したようだった。
そうだね、そういって私の腰に軽く手を回して体を寄せてからそれを離した。
そんな琥牙は確かに便利とはいえ、私、察してちゃんにはなりたくないんだけどな。
「……なんなら明日お出掛けしなくっても、休みの日はずっとベッドで過ごすのもいいかなって、思って」