第27章 ゴールデン・ドーン
そんな彼を見ていて、しまいに言葉が出なくなった。
こう、自分の弟が立派に成人したような?
違うな。
恋人が大出世したような……いやこれも違う。
生まれて初めてパリのノートルダム聖堂のステンドグラスを見上げた時のような。
フランス行った事ないけど。
とにかく。
なにか熱いものが胸にどどどっと込み上げてきた。
「あ、でも」
「……でも?」
上がっては落とされる最近のパターンに私が身構えると何でもないという風に彼が表情を崩す。
「とりあえず、帰ろう。 おれたちの家に」
「………うん!!」
背中に乗ってみる? そんな彼のお誘いに、喜んで跨り首に腕を回した。
供牙様よりもふもふしていて、よく見ると毛の内側で細くて柔らかな産毛みたいのが彼の体を包んでるようだ。
高級被毛のダブルコートというやつね。
暖かで気持ちいい。
ああ、もうどうしよう。
これは私の琥牙なんだ。
軽く地を後ろ足で蹴り、その瞬間にふわっと彼の体が高く浮かび上がった。