第27章 ゴールデン・ドーン
すっかり毒気を抜かれた私が平常心に戻って言う。
「私より、朱璃様とかみんなのお陰だよ。 それに……それ言うなら私だって気付けなくって。 でも、あの。 大丈夫? ……えっと、あの狼とか」
凶暴だとかいう単語は使いたくなかった。
『化け物』
琥牙は自分の事をそう言ってた。
あれもね、何か言いかけて少し考えるように首を傾げた彼が、私の背中と膝からゆっくりと手を離しやおら地面に下ろしてから、姿を変えた。
……あの日に見た牙汪の狼に。
「───────」
以前のあの夜の記憶から咄嗟に足がすくみかけ、違いに気付いてすぐに思いとどまった。
「琥……牙……?」
供牙様と、やっぱり似てる。
彼のように威厳に満ちたとまではまだ言えないとしても、青みがかった銀色の若い狼。
私は月下の元の彼らが一等美しいのだと思っていた。
けれど、琥牙の体に纏われている毛先は陽に透け、金銀に照らされたその姿はまるで、童話に出てくる聖獣みたいに神々しく見えた。
淡い煌めきに反射する、琥珀色のその瞳も。
「上手くおれの中で性質が収まったのかな……? お陰で人姿の外見は半端だけど。 ホントの意味で成長したんだろなあって、母さんが」
狼姿で話す琥牙をやや腰を曲げて興味深く見詰め、私がうんうんと頷く。
「普段の顔付きも変わったよね」
いうならば出会った頃の中学男子から大学生位のレベルで。
相応の成長は遅いって言ってたから、体はまだ大きくなるのかな?
「そう? 以前はずっと…多分『彼』だけじゃなく、自分の中の得体の知れないものを見張ってて、獣体になんて……って、言っても意味分かんないよね? とにかくなんか今は、おれ自身が安定してて楽なんだよ」