第27章 ゴールデン・ドーン
「そんな……の、全然色々じゃない!!」
山中の林にキーンと自分の声がこだました。
だってそれで見たくない、なんて言われたら、もう無理なんだって思うのが普通なんじゃないの?
「え、あの……?」
彼がびっくりしたように瞬きを繰り返している。
何これ何よこれ。
私ってば、最初から馬鹿みたいじゃない。
「私の方が色々大変だったのに!」
朱璃様だって供牙様だって、訳わかんない女だって呆られたに決まってる。
オマケに挨拶も出来なくって。
心配してくれた雪牙くんにも……
「あ、そうだ! 雪牙くんは!?」
「ん? うん、なんか真弥に謝っといてって? で、ドライブの日取り決まったら教えてって言ってた。 そんな約束してたの?」
いいね、楽しそうで。 そう言い目尻を細めて笑いかけてくる琥牙。
そんなのを見ていたら、いっそ怒りを通り越して脱力してしまった。
「……本当に馬鹿みたい、私」
「馬鹿じゃないよ。 ありがとう。 それこそ色々と。……二人から聞いたよ。 真弥のお陰で今回の件が収まったって。 おれのせいで嫌な思いをいっぱいさせちゃってごめんね」
私をいたわる、私がよく知ってる彼の表情。
彼のこれはなにがあっても嘘がない。