第27章 ゴールデン・ドーン
出来ないけど、かと言って沈黙も耐えられない。
せめて言葉は何ともない平静を装おうとした。
「でも私、嫌がられるの分かってたし。 やだよね。 あんなの見ちゃったら、誰だってもう無理だって……」
その私の声が途中で止まったのは、いきなり抱き込まれるみたいにぎゅっと両腕に力を入れて、二つ折りの体を寄せられたからだった。
「それは違うよ。 牙汪はおれと同化しちゃったし、そのせいかあれも自分の記憶と混ざったみたいで何とも思ってない……むしろ」
鼻先が押された彼の首すじから琥牙の匂いがしていた。 それで自然に体が弛緩してしまうのは条件反射なのだろうか。
パブロフの犬的な。
「あの時は……久しぶりに真弥の実体見て、なんかもう無理ってなったのと、直前まで結構凄い事してたって余韻が自分に残ってて、ホント色々困って」
そんな琥牙の顔を恐る恐る見ると、先ほどの里での硬い表情が消えていて、なんだか心底困った顔をしている。
その中に、私が嫌われたはない?
「色々………」
彼の返答にいまいち意味を測りかねていた私は、ゆっくりと彼との会話を脳内で溶かすように繰り返していた。
「二人っきりだったら良かったんだけど……んー、逆にやばかったかな」
二人きりでも、私が嫌になったは入ってない?
「色々?」
「色々」
こく、と頷く琥牙。
そのついでに亜麻色の白みがかった髪先がアーモンド色の瞳を掠める。
丸みの無くなった頬に形よく通る鼻筋。
そんな見た目と一緒に、突然変わったのかと思った。
彼の心も。
私の知ってた琥牙が居なくなったのかと。
「………真弥? なに黙」