第27章 ゴールデン・ドーン
「ふうん?……ああ、そいやさ。 朱璃様が言ってたけど琥牙さんって、小さい時は割と冷めた子供だったんだってさ」
いやだから、聞きたくないんだってば。
とはいえその理由を話すのも面倒で、私は彼の話すがままにさせておく事にした。
「変わったのは彼のお姉さん? が亡くなってかららしいよ。 弟の雪牙君の事とかも、いきなり可愛がりだしたんだってさ。 それこそ伯斗さんから奪う位の勢いでって」
「……だから雪牙くんがあんなに懐いてるのね」
その頃に牙汪が現れたのだろうか。
そんな事をぼんやり思った。
「俺らが元々そうっだってっても、特にあの人が桜井さんにヤキモチとかが酷いのはそういう」
「二ノ宮くん、話題変えない? 実は私たち」
「別れ」
「あっ、そこ崖」
「痛っ!? …ひゃあッ!!」
二ノ宮くんが話しかけるのと同時。
目の前の枝で額をゴチンと打ち、仰け反って前に出た片足がズルッと斜面に滑り落ちた。
「桜─────────!!」
咄嗟に測ったほぼ直滑降の崖は目視でおよそ四メートル。
……こりゃ捻挫で済むかな?
目をかたくつむってそんな事を思いつきつつ、体に受けた衝撃は一瞬で、思った程でもなかった。
「………?」