第27章 ゴールデン・ドーン
そろそろと瞼を開けたら、ホッとした表情の琥牙が私を見下ろしている。
「え……え?」
「真弥ってばとことん……受け身も下手だね。 何もわざわざ顔から落ちなくっても。 頚椎骨折とか洒落になんない」
彼の足元はゴツゴツとした岩場。
頚椎……首の骨? 顔面グチャグチャで?
一瞬ぞっとしかけて、琥牙が私を抱き留めてるのに気付いた。
丸太かなにかを受け止めた体勢からお姫様抱っこみたいなのに移行されたから、彼と私の顔が近くなる。
「か、顔? …あっ!ちょっ」
「ん? 真弥。 おでこに掠り傷が」
「っ触らないで!」
彼が触れようとした指先を避けて、体を捻ったついでに目を逸らした。
嫌だった。
無性に彼に見られたく無かった。
恥ずかしいと、惨めと、痛い。 それらを割ったような心持ちといえば、分かりやすいのだろうか。
「み、見ない……で。 離して」
視線を感じて自分の耳が熱くなってるのが分かった。
「………なんかの真似? それ」
そしてさっきから岸にあがった魚並みにビチビチ暴れてるのだけど離してくれない。
何なのこれ?
嫌われたのよね、私。
訳がわかんなくなって、崖の上からこちらを見ている二ノ宮くんに向けて藁にすがる思いで腕を伸ばしてみる。
「やだ助け、二ノ宮くん! 助けて!」
「イミわかんないけど……俺の立場でどうしろと? ってか、すみません。 桜井さん危ない目に遭わせてしまって」
彼がぺこんと頭を下げて、後頭部の後ろで琥牙が首を振った気配がした。
二ノ宮保、この下僕体質め。
「勝手に帰ろうとした真弥が悪いんだから」