第27章 ゴールデン・ドーン
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里の建物から出てからずっと、今朝はやけに眩しい朝陽の中を駆けていた。
まあ、駆けてるのは二ノ宮くんだけど。
彼の足音に鳥の声などは掻き消され、他は何も聞こえない、静かな朝だった。
大丈夫とは言ったものの、やはり吹きつける風は肌寒かったので、これも申し訳ないが男性の体温が暖かいのが助かった。
「でも、いいの? 皆に何も言わず出てきてさ?」
もう道半ばを過ぎていた。
何も言わずに帰る。 悪い事をした訳じゃなし別に良いんだろうけど、どこか後ろめたかったのは確か。
それに。
「だって、同情、とかで、気を、使われたく、ないし」
「同情……?」
二ノ宮くんは何も知らないんだろうけど。
「少し、私も歩い、ても、いいかな? 話し、づらいし、動かないと……寒くっ、て」
「オッケー。 俺は急いでる訳じゃなし」
お尻を向けたまま会話するのもなんだし。
地面に下ろされると落葉した木の葉に足を取られそうになり、二ノ宮くんがまた支えてくれた。
「あ、ありがとう」
「桜井さんに怪我なんかさせちゃ俺が怒られる」
誰に、とかは聞かなかった。
正直今、その話をしたくなく話を逸らすために「週末でも飲みに行こっか」などと誘ってみる。
足代とは言わないけど、お礼はしたいし。
「珍し。 まあ、そっちがいいんなら喜んで?」
「いや、これからはまた健全に有効な人間関係を築こうとね。 会社の飲み会とかも」